ドラクエの世界観の考察③ DQⅤ 天空の花嫁
前回の記事では『天空シリーズ』第一弾「ドラクエⅣ」の世界観を、その考察も含め紹介しました。
そこでは、「主役は勇者だけではない」「正義は相対的なものである」というメッセージを読み取ることができましたね。
(※『ロトシリーズ』の三作と比較するとだいぶ変わっています。ロトシリーズは、基本的に「勇者が悪を倒す」ストーリーであり、「勇者=主役」という図式や、「正義/悪」の定義は明確でした)
そして、『天空シリーズ』第二弾のⅤでは、Ⅳのメッセージが継承されます。むしろⅣのメッセージに深みが増すものだと言ってもいいでしょう。
では、天空シリーズ第二弾「ドラクエⅤ」の世界観を、ストーリーとともに見ていきましょう。
ドラゴンクエストⅤ ~天空の花嫁~
【幼年時代】
主人公は父のパパスとの旅を終え、2年ぶりにサンタローズの村を訪れます。その村で幼馴染みのビアンカと再会した主人公は、子供たちにいじめられているベビーパンサーを発見。子供たちは「レヌール城でお化け退治をすればベビーパンサーを解放する」との条件を主人公たちに突きつけます。そして主人公はビアンカと共に幽霊が出るというレヌール城へお化け退治に行くのです。
お化け退治をしたことでベビーパンサーを救った主人公はビアンカに別れを告げ、父とベビーパンサーと共に故郷に行きます。その村で妖精のベラと出会い、妖精の世界で起こる事件を解決。
その後、主人公はパパスと共にラインハット王国へ向かいます。そこで少し意地悪なヘンリー王子に出会いますが、そのヘンリーが何者かに誘拐されるという事件が発生してしまいます。
彼を救おうとベビーパンサーと共に古代遺跡に向かった主人公。途中、パパスと合流してヘンリーを救出しますが、遺跡を出る途中で光の教団・ゲマに捕まり、パパスが殺されてしまいます。
そして主人公とヘンリーは、ベビーパンサーを残したままゲマによってどこかへ連れ去られてしまうのです。
たしかSFC版ではベビーパンサーの名前は「ボロンゴ・プックル・チロル・ゲレゲレ」から選ぶ形でした。さすがに「ゲレゲレ」はひどいでしょう…笑
【青年時代前半】
ゲマに捕まってから十数年、主人公とヘンリーは光の教団の神殿を建設するための奴隷として働かされていました。そこで同じく奴隷となっていたマリアと共に神殿から脱出した二人は、修道院に流れ着きます。
その後、主人公はヘンリーと共に自分の故郷を訪れ、その洞窟でパパスが残した手紙と天空の剣を発見します。パパスの手紙には「主人公の母親の事情」と「天空の武具を使いこなせる勇者」について記されていましたが、主人公は天空の剣を装備できません。
その後、ヘンリー王子と別れ、主人公はパパスの意志を継ぐため天空の武具を装備できる勇者を探す旅に出ます。その旅の途中で幼年時代に別れたキラーパンサーと再会、大富豪の娘・フローラとの出会い、ビアンカとの再会といった出来事があります。
そしてビアンカとフローラ、どちらと結婚するのかを選択することになり、結婚後は再び、妻を連れてパパスの意志を継ぐ旅へ出るのです。
妻とグランバニア王国に向かう途中、妻が妊娠していることが発覚。グランバニアにたどり着き、そこで王位継承のための試練を乗り越えた主人公はグランバニア王に即位します。同じタイミングで、妻が男女の双子を出産し、めでたく祝祭が開かれます。
しかしその祝祭が行われた夜、妻が何者かに連れ去られてしまいます。妻を追った先で光の教団の一人・ジャミと遭遇。そこで妻が天空の血を引いていることが発覚します。主人公はジャミを倒しますが、ジャミの死に際に発した魔力によって、主人公と妻は石化してしまうのです。
この頃はわりと仲間になりやすいスライムナイト(ピエール)をパーティーに使っていた人が多いのではないでしょうか?戦力のバランスがよく、そのうえ回復系呪文まで使えますから。
そしてビアンカとフローラ、どちらと結婚するか悩んだ人も多いと思います。どちらと結婚するかで子供の髪の色が違うんですよね。
【青年時代後半】
石化してから数年後、主人公は成長した息子と娘によって石化を解いてもらい、二人と共にグランバニア王国に帰還します。そして自分の息子こそが、天空の武具を装備できる勇者であることが発覚するのです。
その後、未だ行方が分からない妻を探すため、主人公は二人の子供と共に旅に出ます。ブオーン撃破、過去に戻りゴールドオーブ入手などの経緯を経て、海に沈んだ天空城を浮上させることに成功します。
その後、光の教団の本拠地である大神殿に向かい、ゲマを倒して妻を救出し、神の竜・マスタードラゴンを復活させるのです。
そして三つの指輪を手に入れた主人公は魔界へ赴き、母・マーサと再開を果たします。しかしマーサは魔王により殺されてしまいます。そして主人公は魔王・ミルドラースに戦いを挑み、それを制すると世界に平和が訪れるのです。
後半はゴーレム(ゴレムス)をパーティーに入れていた人が多いのではないでしょうか。仲間になりやすいうえに攻撃力・守備力ともに相当高いですからね。
そして「最後の鍵」を持っているブオーンはかなり強かったような…。レベルを上げて息子に「フバーハ」を覚えさせてから戦いを挑んだ方がいいでしょう。フバーハなしでは死にに行くようなもんです(笑)
「ドラクエⅤ」の考察
何よりも敵だったモンスターが仲間になり、戦闘に参加させられるというのが当時画期的でした。ストーリーの充実度も含め、ドラクエ全シリーズの中で最も人気が高いのが、この「ドラクエⅤ」ではないでしょうか?
ストーリーとしては、幼い主人公が父との死別・結婚・子供の誕生などを経験して次第に成長していく、そんな人生の描いたものとなっています。旅の目的は単純に「悪を討伐する」というものではありません。むしろ冒険の初期の段階では何が悪なのかすら明確になっていないのです。
悪と戦うことよりも、旅をする過程で遭遇するイベントに重きが置かれて作られていると言えるでしょう。『ロトシリーズ』では最初から「悪を倒す」という目的が定まっていたことを考えると、やはりだいぶ世界観が変わってきています。
前回の記事でふれたように、『天空シリーズ』第一弾のドラクエⅣの時点で、「何が正義で何が悪か」という問いに対する絶対的な答えはありません。そして本作のドラクエⅤでも、その「正義の相対性」は引き継がれます。
正義と悪の境界線が明確にできない、そんな相対的世界の中で「自分はどのような人生を歩むのか」
これが「ドラクエⅤ」のテーマであると言ってもいいでしょう。冒険の中でも最も大きなイベントとも言える「結婚」の際、主人公は誰を妻にするのか選択を迫られることになります。もちろんそこでも、ビアンカを選択しようと、フローラを選択しようと、どちらが正しいということはないのです。
正しい答えなんかない…そんな相対的世界の中で、自分自身で決めた人生を歩んでいく。まさに「自分を作り出すストーリー」となっています。
そしてこのドラクエⅤでは、主人公は天空の武具を装備することができません。このドラクエⅤではじめて「主人公=勇者」という図式が完全に崩壊するのです。もう主役は勇者だけではありません。どんな身分であっても、自分が主役になれる道を探すことこそが重要なのです。
「自分の道を探す旅」
このことは、次の記事でふれる天空シリーズの最後の作品「ドラクエⅥ」で、より明確化することになります。
次の記事(天空シリーズ第三弾の考察)はこちら⇒「ドラクエの世界観の考察④ DQⅥ 幻の大地」