ドラクエの世界観の考察① ~ロトシリーズ~
『ドラゴンクエスト』
子供の頃、こんなに夢中になったゲームは他になかったと思います。その魅力に引きつけられる人は多く、Ⅲの発売時に至っては社会現象まで巻き起こした国民的RPG。
当ブログのコンセプトも、ドラクエの世界観をヒントにしています。なぜならドラクエの世界観にこそ、今を生きるヒントが隠されていると感じるから…。
そこで今回は「ドラクエの世界観」に関して、その考察も踏まえながら触れていきたいと思います。
まず大前提として『ロトシリーズ』と『天空シリーズ』という言葉の位置づけを明確にしておきます。
ドラゴンクエストは、現時点で「ドラクエⅩ」まで発売されていますが、その中で「ドラクエⅠ~Ⅲ」を、まとめて『ロトシリーズ』といいます。また、「ドラクエⅣ~Ⅵ」を、まとめて『天空シリーズ』といいます。
(それぞれ、『ロト三部作』『天空三部作』と呼ばれることもあります)
そこで、まずはこの二つのシリーズの違いを明確にし、そこから導き出せることをここで紹介しておきましょう。今回は『ロトシリーズ』についてです。
ドラゴンクエスト(Ⅰ)
冒険の舞台は「アレフガルド」という世界。
数百年前、この地は大魔王の手によって闇に閉ざされていましたが、伝説の勇者・ロトの活躍により大魔王は倒され、光の玉によって他の魔物も封印されました。それ以来、アレフガルドは魔物のいない平和な世界となったのです。
その数百年後、平和な日々が続いていたアレフガルドに再び悲劇がおとずれます。アレフガルドを統治している王国がラダトーム、このラダトームに保管されていた光の玉が、竜王という魔王によって奪われてしまったのです。
これにより、数百年前の魔物の封印が解けて、アレフガルドは再び魔物の住む世界と化してしまいました。さらに、ラダトームの国王であるラルス16世の娘・ローラ姫も魔物にさらわれてしまいました。
多くの勇敢な男たちが竜王を倒そうと戦いを挑みますが、その中で生きて帰ってきた者はいません。いずれ竜王に返り討ちにされてしまったのでしょう。そんなある時、一人の預言者はこう言いました。
「やがてこのアレフガルドの地に、伝説の勇者・ロトの血を引く者が現れる。その者こそが竜王を滅ぼすであろう」
そして、その予言の通り、一人の勇者が現れました。この勇者こそが主人公です。勇者はラダトームの国王・ラルス16世の命令により、竜王を倒す冒険へと旅立つことになるのです。
主人公は「勇者」、冒険の目的は「竜王を倒すこと」。キャラ設定も目的も、初めから明確になっているのが特徴です。
村人に話しかける時、「話す→北」とか「話す→東」とか、今思うとボタンをいちいち押すのが面倒でしたね笑
ドラゴンクエストⅡ ~悪霊の神々~
竜王を倒したロトの血を引く者は、妻であるローラとともに新たな地を訪れ、そこに王国を築き上げます。その国の名は王妃の名から「ローレシア」と名づけられます。
やがて、ロトの血を引く勇者とローラは三人の子供を授かりました。そして勇者は、自分の三人の子供に一つずつ国を分け与えるため、国を三つに分割することにしたのです。
「ローレシア」「サマルトリア」「ムーンブルク」この三国は、勇者とローラの子孫によって受け継がれることになったのです。
それから100年後、平和が続いていたこの地にも遂に悲惨な事態が幕を開けます。魔物の軍団によって、王国の一つ「ムーンブルク」が滅ぼされてしまったのです。どうやらその魔物の軍団を統率しているのは、邪教の大神官・ハーゴン。
「このままではローレシアやサマルトリアまで滅ぼされてしまう…」それを危惧したローレシアの王子は、ハーゴンを倒すために旅に出ます。このローレシアの王子が主人公となります。
主人公は旅の途中で同じロトの子孫であるサマルトリア王子とムーンブルク王女を仲間にし、3人で大神官ハーゴンの討伐を目指すのです。
ドラクエⅠの100年後の話ですね。
ここでも、「国王の子孫」という主人公のキャラ設定と「ハーゴンを倒す」という冒険の目的は明確になっています。
“勇者一人で戦う”のではなく“仲間と共に戦う”という点が前作との大きな違いです。
ドラゴンクエストⅢ ~そして伝説へ…~
はるか遠い昔、この世に世界征服を企てる魔王が現れました。その魔王の名はバラモス。
バラモスによって世界が滅ぼされることを恐れたアリアハン王は、勇者・オルテガにバラモスの討伐を命じました。このオルテガはバラモスを倒すための冒険の旅に出たのですが、聞くところによると、旅の途中の戦闘の最中に、火山に落ちて命を落としてしまったといいます。
それから十数年後、アリアハン国王にバラモスの討伐を申し出る一人の若者が現われました。その若者こそ、あのオルテガの息子です。これが主人公となります。
父の遺志を受け継ぎ、バラモスを倒すために仲間を率いて旅立つ勇者。やがて勇者は「6つのオーブ」を集めて伝説の不死鳥「ラーミア」を蘇えらせ、ラーミアに乗ってバラモスの城に乗り込みます。
そして見事バラモスを討ち倒した勇者。その栄誉を称えられ、アリアハンの城で歓待を受けている最中、真の黒幕である大魔王・ゾーマの存在が明らかになります。
このゾーマを倒すため、再び旅立つこととなった勇者は「ギアガの大穴」を飛び下り、アレフガルドと呼ばれる世界に降り立ったのです。その世界はゾーマによって深い闇に閉ざされていました。
紆余曲折を経てゾーマのいる島にたどり着いた勇者は、そこで死んだとされていたオルテガと再開します。間もなく息絶えたオルテガの思いを胸に、ゾーマとの最終決戦に向かうのです。
勇者が見事ゾーマを倒すと、竜の女王から授かった光の玉から光が溢れ出し、世界のすべての魔物が封印されました。これにより、アレフガルドの地に平和が訪れることになったのです。
しかし、ゾーマを倒したことで「ギアガの大穴」は閉ざされてしまい、勇者は元いた世界に戻ることができなくなってしまいました。その後、勇者はその勇敢な功績をたたえられ、「ロト」という称号を与えられることになり、以後、“伝説の勇者”として語り継がれることとなるのです。
これはドラクエⅠの数百年前という設定です。つまりこの『ロトシリーズ』は、時系列的には「Ⅲ→Ⅰ→Ⅱ」の順ということになりますね(Ⅲの数百年後がⅠ、さらにその百年後がⅡ、という位置づけです)。
ここでも、主人公は「オルテガの血を引く勇者」です。冒険の目的も「バラモス・ゾーマ討伐」という明確なものです。
転職システムが導入されたのが画期的でしたね。黄金の爪が隠されているピラミッドが印象強かったです。個人的にはドラクエ全シリーズの中でこのⅢが一番好きです。
『ロトシリーズ』の考察
この『ロトシリーズ』(ロト三部作)では、冒険の初めから主人公のキャラクター設定や旅の目的が明確になっています。
・Ⅰの主人公は「勇者」、冒険の目的は「竜王を倒すこと」
・Ⅱの主人公は「勇者の子孫(王子)」、冒険の目的は「ハーゴンを倒すこと」
・Ⅲの主人公は「勇者オルテガの息子」、冒険の目的は「バラモスを倒すこと」
したがって、このロトシリーズは「勇者や王の血筋を引く英雄が、悪を倒す物語」ということが言えます。
そこでは、「英雄=特権階級の人」という図式が成り立っており「世界を救い、正義を実現するのは一部の限られた人物である」という設定が浮かび上がってくるでしょう。
事実、Ⅲではダーマ神殿での転職システムが導入されていますが、唯一勇者だけは転職できません。最初から最後まで「勇者」なのです。勇者として生まれた主人公は「悪を倒し世界を救う」という自らの運命に抗うことができません。
英雄というのは、自らを犠牲にしてまでも世界を救うために悪に立ち向かう、そんな固定観念が反映されていると言えるのではないでしょうか。
ドラクエⅠが発売されたのが1986年5月27日。
ドラクエⅡが発売されたのが1987年1月26日。
ドラクエⅢが発売されたのが1988年2月10日。
この1980年代後半に発売された『ロトシリーズ』は「決められた運命に従って自らの生きる道を全うする」そんな生き方を体現したロールプレイングゲームでした。
しかし、後に発売される『天空シリーズ』とそれ以降の作品で、ドラクエの世界観もがらっと変わってきます。そして私はそこに、今の時代を生きるヒントが隠されていると思うのです。
では、次回は『天空シリーズ』を考察していきます。
次の記事はこちら⇒「ドラクエの世界観の考察② DQⅣ 導かれし者たち」